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[コメント] マイケル・ジャクソン THIS IS IT(2009/米)

死を予感させるものは何もない。
G31

 リハーサルシーンの集大成だから当たり前ともいえるが、マイケルもどこかリラックスした風情。動きのキレが目に見えて悪い、というようなことはないのだが、本番の緊張感とは明らかに違う。野球選手が試合前のウォーミングアップで見せる、今日の自分の体の動き具合や、グラウンドコンディションを確認する行為に似ている。エネルギーのベクトルが内側を向いて、抑制的な静けさが漂うのだ。端的に言って、タイトルのような「まさにこれ(This is it.)」といったものは少ない。せいぜいが「これがそうなったのかも(This would be it.)」といったところ。

 また楽曲の並び順が無作為で、構成というものを感じなかった。ただし監督のケニー・オルテガは公演の総監督も務めていたというから、メリハリの利いた構成にしようと思えば、お手の物だったのではないか。敢えて特定の意味合いを持たせない構成にした、と言えるのかもしれない。いずれにしても、音楽映画(以外の何物でもないが)としては、退屈だった(※)。

(※私がもっとも血をたぎらせたのは『ビート・イット』。やっぱこりゃ名曲だわ。エディ・ヴァン・ヘイレン(ギターソロ)が可愛いお嬢ちゃんになっていたのは悲しかったが)

 観終えて一番印象に残ったのは、ああ、この人は本当に急死だったんだなあ、ということ。もちろん死因について嫌疑の取り沙汰されていることは知っているが、大スターの突然すぎる死となると、そしてまた彼が直前まで取り組んでいたコンサートの練習風景となると、そこになにか暗示めいた符号を探したくなるのは避けがたいところだ。しかし驚くほど何もない。映画の構成も、意味を持たそうとしていない。それだけに、この元気な彼に(死が訪れた)、と思うと、より痛ましさの増す思いがした。

75/100(2010/06/26記)

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)モノリス砥石[*]

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