[コメント] カラマリ・ユニオン(1985/フィンランド)
フランクは15人いるらしいが、一人二人が主人公といった扱いではなく、皆が出たり入ったりし、さらにサングラスでルックスも判別し難い人たちも多いので、観客にはまず数えられないと思う。
そんな中で矢張り目立っているのは、まず、前作『罪と罰』の主人公を演じていたマルック・トイッカで、彼だけがフランクではなくペッカという名前が与えられている。一人、声や喋り方を不自然に作っていることもあり、他の役者とは判別しやすい造型だ。フランクたちの中だと、矢張り『罪と罰』から引き続き起用されているマッティ・ペロンパーや、ペロンパーと同じく、本作以降も主役級で常連となるサカリ・クオスマネンに目が行ってしまう。ペロンパーには、排水溝の下から登場するショットがあったり、ラストシーンまで絡むという良い扱いだし、なぜか、彼が坂道を転がっているというショットが一番クスリとさせられた部分かも知れない。サカリ・クオスマネンは、本作ではホテルのドアマンをやっており、部屋で女性と会話する場面の劇伴が最初に書いたチャイコ「悲愴」だ。ホテルの玄関で、やおらギターを弾きだして、唄うという場面も与えられている。
本作においても、動的な画面造型は多々出て来る。パンやティルトのみならず移動撮影も多い。サカリ・クオスマネンがホテルのゴミ置き場でいきなり女性にキスをした後、カメラがホテルの建物をティルトアップしながら回転する、といった幻惑的なショットがあったり(こゝでビリー・ホリデイのBGMが流れ始めるのもカッコいい)、他のフランクにも、ダッチアングルというかカメラが回転しながら寄っていくショットがある。また、4人のフランクが閉店した無人のバーに入って行き、1人はバーテンダーになり、3人はカウンタに座って煙草を喫い始めるシーンがあるが、こゝの3人相似形の構図はちょっと小津を想起した。尚、本作でも会話シーンの切り返しなどで、人物に寄り過ぎの構図が多いと感じた。バストショットぐらいの方がずっといいのに、と思いながら見た。あと、既 存曲は、チャイコフスキーとビリー・ホリデイ以外にも、コルトレーンなどのジャズや、チャック・ベリー、エルモア・ジェームス、アン・コール、ジョン・リー・フッカーのブルースがばっちり決まっている。フランクたちの演奏シーンも、もっと長くてもいいと思った。
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