多少の脚色はあれ、ああいうハプニングに近いこともあったんじゃないのかな。都合の悪いことは表に出てこないだけで、初めてやる実験はどんなに計算していてもミスが出て当たり前くらいだと思う。

変に緊張感を持たせない演出にも好感を持った。いくら重大なプロジェクトに携わっていると言っても所詮人間。数時間ならともかく何日もの間、常にピリピリしていられるわけがない。気が緩めば恋もする。クリケットだって（いや、これはやりすぎ？）。けれども事件が起きれば一丸となって真面目に取り組む。そんなシーンの演出でも、ハリウッドでやりがちな派手な音楽流して喧々諤々させるような真似はせず、ちょっと緊張感を出すくらいに抑えたのが、科学者らしい冷静さを感じさせて良かった。

ラスト、現在のサム・ニールはディッシュの守衛さえ知らない存在だった。でも、それでいい。裏方は誰にも知られず去って行くもの。立役者であったことは自分が知っている。その誇りを胸に、彼は真っ直ぐに続く道を歩いて行く。