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[コメント] 鬼が来た!(2000/中国)

あらゆる国籍の観客へのエクスキューズを用意し配慮すること。映画の外側にまで周到に作りこまれた脚本の落とし所は、ただ一つだけの「戦争の狂気」。あまりの単純さに戸惑い、圧倒。
Kavalier

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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なぜ戸惑ったか、この映画に政治的な意味を無意識であれ、求めていたからなのではないかと、自己分析。

まず、「日本人は戦中に蛮行を行った」ことを伝える、擬似記録映画を鑑賞前に想像していた自分を恥じたい。

たとえそれが、戦時下の敵国兵士と売国奴であろうと、たった二人の命の生殺与奪の判断をめぐって、苦闘を繰り返す農村の住民達を描く前半と、些細なボタンの掛け違いからの、狂気の発露と大量虐殺が描かれる後半。非常にシンプルな映画だと思う。人間は変わらなくとも、環境によっていかようにでもなるのだ。

歴史を整理することは、史実の断片をかき集め、今という視点から意義付けすることではない。事実の断片は欠けたまま放置しておくべきだ、中国人の、自国史への冷静な視点とそれに普遍的な意味を見出そうとする作業。つまり、この作品は言いえて言うなら「日本」とか「中国」等の記号の意味を排除することで成立した「普通の戦争映画」だと思う。たった50年前の出来事を「普通の映画」にすることで、普遍的な問いへと変換する作業を見せ付けられた感じがする。

上記に戻るが、必要以上に複雑な映画に見えてしまうのは、日本の戦後処理政策をそのまま表しているようで興味深い。 そういう意味では、この映画を理解するには、日本人であるということが、邪魔をするような気さえしてくる。

※日本が戦時中にしたことを忘れろってんじゃないよ。

[2002.1.26]

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (4 人)林田乃丞[*] グラント・リー・バッファロー[*] peaceful*evening[*] たかやまひろふみ

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