『オトナ帝国』を観て久しぶりに劇場に足を運ぼうかと思ったりもしたのだが、やっぱり子供向け映画を大人が観るのはどうなんだという、しょうもない考えに襲われ、観に行かなかったのが後の祭り。『オトナ帝国』以上に大人向けじゃないですか。むしろ子供は楽しめないかもしれない。

ひたすらリアルに描かれる合戦シーンはもちろん、身分の違いに思い悩みながらも廉姫に恋する又兵衛など、もはやアニメ映画というより、アニメで描かれた時代劇。いちいち胸にうたれます。そして又兵衛の死。

クレヨンしんちゃんである必要がないという意見も分からなくはないが、普段おバカなことをやっているしんのすけが「お前、逃げるのか」という台詞を言ってみたり、泣き顔を決してみせることのないしんのすけが正面からボロ泣きしたり、クレヨンしんちゃんだからこそ感動するシーンなわけで、決して他の登場人物でいいものではない。

そしてラストシーン、しんのすけの金打に廉姫の台詞。青空を見上げる野原一家。切ないったらありゃしない。こういう演出をさせたら原監督の右に出るものはいないんじゃないかしら。とにかく満足。

蛇足だが、翌年ついに堪り兼ねて劇場に足を運んで、激しく後悔したのは言うまでもない。