コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] アザーズ(2001/米=仏=スペイン)

アメナバールの裏テーマは常に、(一種の原点回帰なのだが)映像美の持つ存在感にあったと思う。キッドマンでさえその駒として使われているのを見るのは、(彼女の美の虜としては)むしろ小気味いい。
G31

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







どうも君とは女の顔の趣味が似ているような気がするよ、アレハンドロ。

***

妖怪が屋敷を徘徊している。他人という名の妖怪が・・・。

そういや誰かが『シックス・センス』に似てるって言ってたなと、最後になって思い出した。だが冒頭の絶叫シーンからすでに美しいニコール・キッドマンが亡霊だなんて、まったく想像しなかった。確かに観客を欺くための迷彩の施し方が少しずるくて、特に娘・アン(アラキーナ・マン)が老婆に見えてしまうところ、それから結局話に関係ないのに頭痛薬を思わせぶりに持ち出してくるところなど。だがこんなことはちっとも関係ない。ニコールの美しさは、映画を成立させている約束事をすべて越えたリアリティをもって現実に存在していて、僕はそれにすっかり魅入られていたから。美の持つ圧倒的な存在感を疑ってみるなんて思いもよらなかった。少なくとも僕に関しては、ヒロインにニコールを起用したことは大正解だったと言える。

もう一つ付け加えるなら、子供二人の演技、というより、子供たちの描き方、だな。死して後も精神的な成長を遂げていく二人の姿は、そこだけ取り上げたとしても、成長譚として秀逸だったと思う。もっと子供向けの、子供がたくさん出てくるような映画であってさえ、かよわい存在でありながら独立した人格として子供が描かれることは、むしろ稀であるように思う。

アメナバールが凄いのは、何もことを起こさず雰囲気だけで恐怖を演出しつつ、終盤まで引っ張る技巧、ラストで畳み掛けるようにどんでん返しを演出する技巧に、まずあることは間違いない。だが本当に凄いと思えるのは、そんなどんでん返しで世界観をひっくり返すことによって、亡霊なる怪しげな存在の産み出す、本質的な恐怖を描いてみせたことにある。何も亡霊は、壁を叩いたり家具をゆすったりして人間を怖がらせるから怖いわけではない。何かに対する強い執着から死後も成仏(というのはずいぶん日本的な表現だが)出来ずにいること、つまり、亡霊として魂が地上にとどまることそのものが、恐怖の対象なのである。ニコールの美しさも子供たちの成長譚も、実はまやかしでしかなかったということの衝撃と、その悲しみ。この悲しみが、未来永劫続くであろうと思えることに、何より恐怖を覚える。

・・・とは言いながら、意外と今後、家族3人と使用人3人とで、仲良く楽しくやっていけるかもよ、と思えてしまうところが、いまいち怖くないところ。スプラッタ・ムービーの方がやっぱり怖いのかも、とちょっと思える。こういうホラーの原点のような作品があったからこそ、スプラッタものや最近のコミカルなホラーが生まれ得たのかもね。そういや2作目は喜劇としてやってくる、って昔の人も言ってたっけ・・・。

80/100(02/09/08見)

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (3 人)ゼロゼロUFO[*] プロキオン14[*] kazby[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。