[コメント] 裏切り者(2000/米)
電車の映画。どこか『ゴッドファーザー』part1・2を踏まえた様子も窺える。主人公の境遇の卑近さと裏社会の黒さや、人間関係における信頼と敵意。それらの緻密な描写から醸し出される雰囲気がいい。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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まず、この邦題にはネタバレ投票したいくらいだと言いたい。原題を見て「Yard」の意味を調べてみると、事件の現場となる「操車場」という意味の他、「仕事場」、「家」、「本拠地」といった意味もあるらしい。この一語で物語の内容が端的に言い表わされているのが分かる。
列車が走る画から始まるこの映画は、劇中でも家が列車の振動を受けて揺れたり、電灯が点滅したりと、常に列車の動揺の中にある。最後も列車に乗るレオの姿で終わるが、最初、刑期を終えて帰宅してきたレオは、結局は「有益な一市民」として社会復帰する半面、母親以外の人間との絆を損ない、居場所の無いまま列車に乗り続ける人間になってしまったようにも見える。
だからこそ、エリカの死後、彼女の母親の傍にその幼い息子を戻らせる場面が、感動的なのだ。レオは、嫌気がさした裏社会との関係を断ち切ろうとするかのように、沈黙の掟を破って関係者たちを告発するが、これはまた、口約束で互いを信頼し合う絆を、全て切ってしまうという事でもある。他人を殺す覚悟が無ければ自分が切られるという重圧に耐えかねたのだという事だろうが、それでもやはり、ラスト・カットで独り列車に揺られるレオは、孤独以外の何ものでもない。
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