[コメント] アメリ(2001/仏)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
嬉しくて嬉しくて泣けるシーンでもないのに涙が出てきた。今まで“自分にとっての一番の映画”というのが判然としていなかったのだが、やっと現れてくれた。映画を観る喜びというものを身体の芯まで味わった作品。明日死んでもいい。
※レビュー追加
観てから暫く経ったので、落ち着いてレビュー。
そもそも映画には「どこかで起こっている現実をわかりやすく多くの人に伝える」という要素と「起こり得ないことを再現して、普段体験できないことを疑似体験させる」という相反する要素を持ち合わせているところに楽しみがあるのだと思う。
この比率は映画によってマチマチで、従来のジュネ+キャロ作品は、どちらかと言えば「起こり得ないこと」に傾倒していた節があるようにう思う。
では、今回の作品が幾ばくか起こり得るものかと言うと、そうとも言いきれないのだが、完全なる異世界のようなところから、少し現実的な舞台(モンマルトル)に場所を変えたおかげで、起こり得ないことを親近感を持って楽しむことができるようになった。
完全一匹狼を気取る人以外は、大なり小なりお節介を焼きたいか焼かれたいかするものだ。お節介、と端的な表現をすると「そんなことはない」という人続出だろうが、「あの映画はこうした方が面白いのに」「こういう風に観たらこの映画はとっても面白いのに」「その映画はとってもつまらんのに」なんて考えている時点で既にお節介なのだ。
でも、日常できるお節介なんてたかが知れている。ネットで勝手な文章を書きなぐるのが関の山。からまれている酔っ払いを助けることもできなければ、携帯電話を車内でかけている人を注意もできない。
アメリは映画の中で、おいおいそこまでするかいな、というほどのお節介を焼く。中にはあまりにもバカバカしいものもあり、そこまでしないぞと思うのだが、そうまで思える分爽快感すら感じる。変にリアルさに拘っていないからではなかろうか。
この映画を簡単に評するなら「いつまでも他人に世話焼いていないで、自分のことを考えてご覧」だの「人はだれでも人生に失敗する権利があるんだよ」だの「殻に閉じこもってないで、外へ出てご覧」だのをテーマにしている、とも言えるだろう。言うのは構わない。
それ以前に私は、単純に色鮮やかな映像と荒唐無稽な物語を身体で感じられたことを大切にしたい。
このサイトに訪れている人達からすれば何を今更そんな当たり前のことをと思われるだろうが、映画館で楽しむ映画を観る喜び、というものを私は今頃体験できたのだった。
それだけでもこの映画そのものに感謝したい。
余談だが、小人の人形が世界旅行をするというのは元ネタがあって、アメリカの老夫婦とカエルの置物の話(実話)があるとのこと。私は知らなかったが、かなり世界的に有名なエピソードらしく、それをあそこまでアレンジしたのには感心する。
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