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[コメント] JSA(2000/韓国)

この映画の苦さは、中立の立場として悲劇を傍観しなければならない、やりきれなさからくるような気がしてならない。
くたー

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







あくまで南から描いた南北問題。しかし分断が生んだ問題の根深さは、ひとつの何気ないシーンにあらわれているように思える。

チョコパイのシーンでのやりとり。南側の人間が2人に亡命を薦めるのに反発して、北側の人間は自国の誇りで撥ね付ける。統一というのは本当の意味での共存ではなく、一方の国に片方を引き寄せることでしかありえないのでは、という気がしてならない。南北統一という夢を互いに描きながらも、上手く折り合いを付けようとするには、2つの国が刻んだ歴史の隔たりはあまりにも大きい。統一という形のシナリオの裏には、必ず悲劇が生まれると言う事を、あらためて東西ドイツの統一の時の事などを思い起こして考えざるを得ない。

「主観」と「客観」が交錯する作りの映画になっている。2つの違った「主観」によって捻じ曲げられた陳述書が、なぜここまで食い違っているのかを「客観」で探ろうとする。そしていかにしてその隔たりが生まれたか、その手に余る「真実」を知った瞬間、見なかった事にすることでしか平和は保たれないことの苦さを思い知る。そしてそれぞれの国を背景にした「主観」や民族を背景とした「主観」に対して、あくまで「第三者(客観)」でしかない我々は、統一がかなったとしても、真の解決の糸口を見つけることもなく、ただ悲劇を傍観するしかないということに重ね合わせてみたりもする。「中立国の立場でのヒューマニズムというのは一体何なんだ」みたいことを言ってたセリフがあったが、後々まで尾を引くほど重い言葉であった。

(評価:★4)

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