[コメント] 浮き雲(1996/フィンランド)
映画を見終った人むけのレビューです。
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ものすご不幸続きで、暗い表情の夫婦の辛気くさい話なんだけれど、赤、青、緑、ハッキリした美しい色彩、セット、小物のセンスの良さ、小気味よい音楽、何となしのコメディ調が、不幸感を和らげ、観易くしている。
そして「愛情」の描き方が堪らない!
こんなに不幸が続けば、些細なことで啀み合って、お互いに当たるのが普通だろうけれど、お互いが深く想っている。
疲弊しきった表情だけれど、実は生命力に溢れ、バカな旦那を常に許し、カジノで全財産スっても、何も云わずスッと手を握る妻。
自分の靴を直すお金も無いのに妻に何かと花を贈る、抜けているけれど憎めない夫。
そして、どんなに貧しくなっても犬を決して手放さない2人の情け深さと云うか、愛情には笑えながらも、グッと来た。
登場する人物は無表情で、感情を露わにすることも無いし、寡黙で、全体の台詞も少なく、「冷たい」印象になってもおかしくないのだけれど、非常に「温かい」シネマだ。
特別可愛がられるシーンも無く、隣にちょこっと出てくるだけなんだけれど、犬が頗る大切にされていると解る演出がまたニクイ!
婉曲な愛情表現だけれど、このもどかしさがまた良い。アメリカン・ムーヴィーのあからさま過ぎて、観てて冷めてしまう感情表現とは大違い。(←日本人には合わないと個人的に思います)
編集の粗さと、いきなり店があんなに繁盛しちゃったのには違和感を感じたけれど、そんなことは、まあどうでもええかな。
厳しい自然の中でも、逞しく、温かく生きている、木訥な北欧の人たち(←あくまで勝手なイメージ)そのものなシネマだった気がします。
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