コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] ライムライト(1952/米)

映画で嘘をつくことができなくなったチャップリンの顛末に一抹の侘しさを覚えるSO-SO 作品
junojuna

 自らの心情を映画に託すことでその技芸に対する矜持、ドラマに対する真摯な姿勢が不器用にも強烈な抒情として立ち上がるチャップリン映画の真髄が、本作ではその極致に峻厳な自己内省の視点を得て、あまりにも誠実すぎる作劇は作品に内在すべきレトリックを拒絶するかのような頑固さを湛えて苦境にある。そしてその誠実さゆえに教条主義的な物言いとなってしまうところに、盛者必衰の道理をわきまえた侘しさが充溢しており、いかにも老いさらばえた風采が露な仕上がりは鈍重な結びとなって図るところに届き難い。そう思えば、映画が生誕して50年もの齢を数えたこの時点で、同時代的視点で語るとするならば、映画でどう語るかではなく、映画で何を語るかに固執して見えるチャップリンはやはりアナクロニズムの窮地にあったと言わざるを得ないのではないだろうか。チャップリン固有であり、濃縮された彼のロマンティシズムが、その完璧主義ゆえの排他的な志向性の強固さによって構築されるとき、言及されない映画内存在の構成要素が矮小化されていることは大きな意味がある。言うなれば、チャップリンの映画理念と映画ニーズのギャップが一際なものとなり畢竟を迎えることとなった一作である。

(評価:★3)

投票

このコメントを気に入った人達 (0 人)投票はまだありません

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。