[コメント] 座頭市と用心棒(1970/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
市が村に向かうシーンでは、「梅の香り…」梅林にはワラ人形に五寸釘、「せせらぎの音…」川の中に放置された死体。
村を訪れるシーンでは、手首こそ咥えていないが犬は出てくるし、家の中でひっそりと息を潜めている住人たちなどなど。
物語も村を舞台にしたヤクザ同士の争いというところから、幕府の御用金横領、隠密もぞくぞく出てくるスケールの大きさ、そして金に目がくらんだ人間のあさましさなど、重層的に展開され、それにつれて市と用心棒の魅力がどんどん大きくなっていく。
殺陣の方もさすがの出来栄えではあるが、今回は一対一の殺陣よりも、大掛かりなヤクザ同士の抗争の描き方がよかった。スピード感と迫力があり、それでいてうっとおしい感じもしない。
勝新太郎と三船敏郎に、うまく若尾文子を加えて、絶妙のバランスをとりながら、それぞれの持ち味を引き出している。そこには、二大スターに臆することなく楽しみながら映画を撮っているなあと思わせる岡本喜八の姿が見える。
ラストなんかは醜い人間の姿を暴く痛烈なシーンもあるのだけど、そうであっても肩肘はらずに、ゆったり映画を楽しませる、娯楽としての映画を忘れない、それが岡本喜八の余裕であり、この映画にもよく表れているのだなと思った。
☆☆☆☆オマケ☆☆☆☆
これは勝プロダクション製作だが、この映画を見る直前に、同じ年に三船プロが製作した『待ち伏せ』という時代劇を見た。
主な出演者は、三船敏郎に勝新太郎、それに加えて石原裕次郎、中村錦之助、浅丘ルリ子という超豪華な顔ぶれだが、てんでバラバラに大スターたちが、それこそ、わがままと無理でつくったような見せ場をもらってやっている。
豪華スター競演の失敗作の典型であった。本作とは雲泥の差がある。ひょっとしたらそのせいで、採点が甘くなったかもしれないが、それでも本作が面白い映画であることはまちがいない。
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