コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 天と地(1993/米)

オリバー=ストーンは絶対トミー・リー=ジョーンズに感謝しないといけないぞ。彼の存在なくば絶対★1にしてた。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 ヴェトナム戦争を撮り続けるオリバー=ストーン監督の放った渾身の大作。ついにここでは主人公はアメリカ人を離れ、ヴェトナムの、しかも一女性を主役とした物語を作り上げた。

 さすがストーン。私が大っ嫌いな監督なだけはある。ここまで見事に外しきった作品に出会うことは滅多にないぞ。いっそ見事と言おう。

 いくら原作があるとは言え、人の国の物語を手前勝手に解釈して「どうだ」と言わんばかりに目の前に出されても何の感慨もない。いや、感慨があるとしたら一言「馬鹿じゃねえの?」でしかない。人の国の文化にずかずか入り込んで、勝手に悲惨な状況をエンターテイメントして見せつける。それがどれほど愚劣な行為なのか、監督は分かっているのだろうか?これをヴェトナム人に見せてみろ。多分他の凡百な(ストーン監督自身の作品も含めて)ヴェトナム戦争の映画のように、「笑いものにされた方がまだましだ」と答えるのではないか?特に前半、ヴェトナムでのシーンは冷静に観ることさえ出来なかった。ヴェトナム人がみんな英語喋ってるって事だけでもイヤ。

 映画で大切なのは主人公(あるいはその周囲の人物)に感情移入が出来るかどうか。そこが大切だと思うが、最初からその点放棄していたとしか思えない。いくら悲惨な映像を見せられても、主人公のティー・リーが泣こうと、ストーン監督の目で見ている限り、観客の感情移入は完全に避けられてしまっている。そもそもアメリカ人が感情移入できないヴェトナムの人々を主人公に持ってきたことで、物語の破綻は見えていたのだから…

 ただ、中盤でトミー・リー=ジョーンズが出たところから、物語は全く別の形を取ってきた。そこにアメリカ的価値観で判断する人物を挿入することによって、ようやく映画の体裁を整えてくれた。ストーン監督は彼に感謝しなければならないぞ。

 それで後半だが、今度はドメスティックな意味での暴力映画になってしまい、これはこれで何か嫌な展開。自伝だからこう言うのもあるんだろうけど、蛇足部分が多すぎるだけにしか思えない。

 観たのがテレビだったため、半分眠りながら観てしまった(私にとってはこれは珍しいことなんだけど)。時にこういう作品を観る必要はありそうだ。自分の映画の観方とその姿勢を確認するためにも。

 そうそう、喜太郎の音楽は結構好みだったことだけは言っておこう。

(評価:★2)

投票

このコメントを気に入った人達 (2 人)sawa:38[*] らーふる当番

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。