人の着る服を作り、ブラシをかけ、洗濯し、アイロンをかけ、人のベッドを整え、靴を磨く。あるいは、人の食べるものをこしらえ、誰かにワインを注ぎ、皿を洗う。 または、人の乗る車を組み立て、それを整備し、運転する。

仕事が終わったら、例えば、そこらの居酒屋で一杯ひっかける。または、ずばり当たった試写会へ直行し、くたびれた体を椅子の上に割とだらしなく置き、しんどいから靴を脱いで香ばしい足をよいしょとのっけてまるーくなり、コマーシャルにいらいらしながら、ぼんやりとスクリーンを見つめる。 映画とは直接関係はないけど、なぜか、私達のストライキがどんな意味を持つか、改めて考えた次第。

ミス・ケントン(エマ・トンプソン）、そんなに泣かないで、と言ってあげたかったよ。 あなたと、ミスター・スティーブンス(アンソニー・ホプキンス)は絶対に合わないんだよ。

”しつこく聞いてすみません。でも、正直あなた自身はどうだったの？””これから、それを確かめに行くんです”。質問の答えになってないんだけど、スティーブンスの気持ちが、ふわっと高揚しているのがわかる。 後でこの場面を思い出してとても切ない。

スティーブンスに政治の話を振り、答えられない労働者に国の未来を決める権利があるかと得意げな貴人。ゲームに忙しく、豆腐やほうれん草の値段も知らない、哀れなやつがだ。