[コメント] エスケープ・フロム・L.A.(1996/米)
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カート・ラッセル演じる伝説のアウトロー、スネーク・プリスケンがまずもって素晴らしい。 スネークは『北斗の拳』のケンシロウのような、絶対的な強さを持ったキャラクターではない。「伝説のアウトロー」として全米に名を馳せている割には、前作同様、敵にあっさりと捕まってしまうし(しかも2度)、足を撃たれて負傷までしてしまう。捕まって、敵のボスが犯行演説している映像の後ろのほうで、ルームランナーで歩かされているスネークには今まで映画でこれだけ笑ったことがあったか!? と思うくらい大爆笑したくらいだ。彼はなんも考えていないし、はっきりいえばバカである。今作でもアメリカ政府に前作と同じ手口ではめられて、危険を犯すハメになってしまう。最初に支給された潜水艦もスピードの出しすぎでぶっ壊すし、最新の武器も役に立てる前に敵につかまってしまう。しかし、スネークはギャビン・ライアルの冒険小説に出てくる主人公達のように、決して譲れぬ自分の価値観をしっかりと持ち、敵との戦いに苦戦するも、持ち前のしぶとさで最後には必ず勝利を収める(ライアル作品の主人公と決定的に違うのはスネークがアホだという点であるが・・)。本作では潜水艦・バイク・アメ車・グライダー・ヘリコプターを巧みに操り、サーフボードで波に乗り、ルームランナーに乗り(笑)、バスケットで3点シュートまで決めてしまうのだ。ジェームズ・ボンドも真っ青な、こんなキャラが格好良くないわけがない。ピーター・フォンダ (『イージー・ライダー』の主演のヒト。いい年してなにやってんだか(笑)キャプテン・アメリカはやっぱり作中の全体主義国家・アメリカでは投獄されちゃうんだろうな・・・・)演じるサーファーと地震で発生した大「ツナミ」に乗ってサーフィンするくだりは、お前らアホか!とモンゴリアン・チョップを食らわせたいと思う反面、私にとってかけがえの無い、超お気に入りのシーンでも有る。有名なセリフ「スネークと呼べ・・」やラストシーンに代表されるようなスネークの反骨精神もきわめて魅力的だ。
作品に関しては、前作『ニューヨーク1997』がニューヨークのマンハッタンを監獄にする、という秀逸な設定を映像化するには製作費がやや、乏しかった感があるが、今作は製作費にも恵まれ、素晴らしいSFアクション作品に仕上がっている。なにより、ジョン・カーペンター監督やカートラッセルらスタッフがノリノリでこの作品を楽しんでいる!!っていうのが画像を通じてヒシヒシと伝わってくる。 カート・ラッセルもハリウッド・スターまで上りつめた今、わざわざ売れていなかったころ出演したB級近未来映画の続編に出演しなくても作品には恵まれているのに、今作では脚本・製作にも参加し、「スネークは俺の分身だ!」と公言するくらいの熱の入れようだ。このあたり、ラッセルのスネーク・プリスケンへの思い入れと共に、カーペンターとの長年の友情も垣間見えるようで嬉しくなる。 たしかにこの作品は得票分布を見れば解るように、賛否が激しい映画だ。いたるところで見うけられるCGはチープで、もろ合成ってシーンもあるし、ストーリーもブッ飛んでる。スネーク・プリスケンに感情移入できない人にはオバカなノリの荒唐無稽なB級SF映画としか映らないだろう。だが、いいのだ。この作品はカーペンター監督とカートラッセルによる、監督とラッセルとスネークファンの為の偉大なる内輪映画であり、確信犯的に製作されたB級映画なのだ。(まあ、カーペンターの作品はみなB級の雰囲気プンプンだが・・)オープニングで監督作曲のあのテーマソングが流れ、スネークが登場し、あの低い声で「スネークと呼べ・・」というセリフを聞いた瞬間から、私は2013年の荒廃したロサンジェルスをスネークと共に旅しているのだ。
カーペンター監督の最高傑作は個人的に、完成度では『ゼイリブ』、作品への個人的思い入れではこの作品だと思う(『遊星からの物体X』も素晴らしいが、グロいの苦手なんで)。続編を熱望してやまない。けど、あのラストではこの後の世界というのは作り難いですね。クリーブランドの話がセリフの中に出てきたけど、「スネーク・プリスケン シリーズ・エピソード1」てな形で出るのかな?そうなりゃ燃えるぜ!ハンドルをスネーク・プリスケンに変更しようかと思う今日この頃です。いずれにせよ、続編まってますよ、カーペンターさん!
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