[コメント] イングリッシュ・ペイシェント(1996/米)
大河的メロドラマと言ってしまえばそうなのだが、映画という映像を生かしたロマンの薫り高い忘れがたい作品に仕上がっている。ファインズを通し過去と現在の二つの物語をドラマチックに交叉させ、それも見応えがある。二人のタイプの違うヒロインも美しい。
原作はブッカー賞を受賞した「イギリス人の患者」。未読なのだが映像からも十分に文学的なロマンティシズムが伝わる大作になっている。正直この作品を観た時に、この内容がよくぞ現在に映画化出来たなぁと感動した。それ程、昔の名画が続々生まれていた時代の香りが充分に溢れていたから。監督のミンゲラも現代的になりすぎるのを避けるのを意識したのでしょう。儚さを漂わせるノーブルな人妻のクリスティン・スコット・トーマスはクラシックな雰囲気で印象を残し、配給会社の反対押し切ってキャスティングしただけある活躍を残した(残念ながらこの作品以降印象的役柄に巡り会えていないが・・)。対照的なナースを演じたジュリエット・ビノシュの生を体現する瑞々しさは感傷的なパステル調の画面に唯一違う鮮やかな色のインクを落としており、オスカー受賞も納得。廃墟や砂漠などの壮大なロケーションやパーティーシーンも夢のようで観終わるとこれぞ映画!という醍醐味を味あわせてくれる。エンタテイメント重視に傾斜してゆく映画界をぐいっと芸術性で引っ張り、引き止めてくれた90年代の印象深いラブ・ストーリー。ミンゲラに喝采。後部座席にトーマスを乗せたファインズの悲しみの飛行シーンは映画史に残る名場面。
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