[コメント] 名もなく貧しく美しく(1961/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
出演者にクレジットされている加山雄三はいったいどこで出てくるのだろう?そんな事を考え始めた矢先だった。
それまでずっと涙目で見ていたスクリーンに、パッと満開の花が咲いたような素晴らし過ぎる登場をした。嬉しかった。とても素敵なエンディングが予感されたから。
たった1シーンのあの笑顔。物心つかない幼児期に空襲で孤児になった身の上を観客は知っている。施設に預けられた彼のその後は一切描かれなかったが、たった1カットのあの笑顔の好青年ぶりで、観客は彼の生きざまを知りうる事が出来た。
繰り返すが、たったの1カットである。1カットの笑顔だけで人間ひとりの人生を表現した役者も役者だが、それを演出した松山善三も凄い。
そしてその後は「とても素敵なエンディング」に突き進む(はず)だった・・・まいった・・・
本当にまいった。あるべきはずのラストはズタズタに切り裂かれ、感動の涙を準備していた私に嗚咽の声を上げさせるラストが用意されていた。松山善三は脚本で観客を意地悪く弄んだ。
2種類のラストが用意されたというが、松山善三にとってはラストなどどうでも良かったのかもしれない。それまでに充分過ぎる程に価値観の考え直しをさせられるのだから。
「幸せって何なんだ?」「家族って何なんだ?」そして「普通って何なんだ?」
作中に「普通の人」という言葉が随所に登場する。私はろうあ者ではないので「普通の人」なのか?どうだろう?それなら「普通」を「完璧」という言葉に置き換えて映画を見直してみよう。
そうだ、今度は妻と一緒に見てみたい。もしも一緒に涙を流してくれるなら、きっとこれからもずっと一緒にがんばっていける気がする。
そうだ、誰でも良い。ひとりでも多くの方にこの映画を見てもらいたい。押し付けでも構わない、この畏怖と感動をひとりでも多くの方に共有してもらえるのなら素人コンテーターとして極上の極みである。
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