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[コメント] 楢山節考(1958/日)

田中絹代さん、寒気がするほど神々しかったです。
づん

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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この監督の作品は初めて見ましたが、斬新な技法を使っていてとても面白かったです。単色のライティングなんかは市川崑とはまた違った趣で、作品のおどろおどろしさ、物悲しさに非常にマッチしていました。それから暗転て言うんでしょうか?あれもかなり度肝抜かれました。これらはちょっとズレると非常にイヤミに映る技法だとも思うんですが、そういう厭らしさを全く感じさせる事なく、本当に作品の味わいと上手く絡み合っていたと思います。

でも始終ガンガン使われる三味線と義太夫は正直耳障りでした。作品の中に入り込みそうになる度に義太夫と(特に)三味線が邪魔をする。クライマックスでもこれでもか!というくらい多用されていて、正直ちょっと勘弁してくれーと思ってしまいました。アクセントという感じで使った方が効果的だったんじゃないかな。

またオールセットでの撮影も、こだわりの理由が私にはイマイチ分かりませんでした。セットだからこそ伝わる何かがあったとはちょっと思えない。ただしクライマックスの立ちこめる霧は素晴らしかったです。あそこはセットで正解だったと思います。

そんなクライマックス、若干邪魔が入りましたが、これは本当に素晴らしいシーンでした。何故かカメラが遠巻きなんですが、それが逆にとても有効だったと思います。表情なんか全然識別出来ないくらい遠いのに、もう二人がどんな顔をしているのか手に取るように分かる。というか、分からせる演技をしてるんだと思います。田中絹代さん、本当に素晴らしかったです。寒気がするほど神々しかった。

そしていつの時代も「老い」を自分のものとして考えられない若者っているんだなぁと。食べる事に困った事のない分際で言うのも説得力ありませんけど。

あと、ラストシーンは正直蛇足だと思いました。

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08.08.26 記

(評価:★3)

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