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[コメント] シビル・ウォー アメリカ最後の日(2024/米)

「Civil War、ちびるわー」とまでは思わなかったものの、期待以上に面白かった!
kiona

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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洗練された絵でキメて音楽でつむぐ映画のようだけど、自分には脚本の映画に見える。ロードムービーってディテール突き詰めるとダレる難しいジャンルだと思うんだけど、要所できちんと引きつけるのは、どのシーンも見せたいテーマがかっちりもまれているからだ。日常の痕跡が残る市街地での爆発を見せる。戦闘の過酷を見せつける。分断の敵対が行きつく景色はこうだ。隠れて狙撃し合うこの現実の意味って何だ。レイシズムのナショナリストが体現する回復不能のディスコミュニケーション。(まあそこに至るアジア人の登場の仕方は、後から考えれば、取って付けたのを勢いで誤魔化した感じが結構したが…)。この過程すべてに、主人公たちジャーナリストの心理的交錯と変化が、エンタメレベルではあるものの、非常に丁寧に織り込まれているように思えた。それがあるから、自分は、D.C.のくだりもよかったと思っていて、恩師の死と娘のような存在ができちゃった主人公がひよるのもわかるし、それを市街戦のエスカレートと対比的に絡ませるのは巧みに感じた。何しろA24だし、このネタをやるのにジャーナリストが主人公じゃ、ガップリ四つに戦争シミュレーションやるわけじゃないだろうと踏んでいたので、うまく期待値コントロールされていたような気もする。

ただ、この終盤、若干ではあるが、心理のコンティニュイティがバタついているようにも見えた。主人公がひよるのは、交代劇というシナリオの不文律から読めたから受け入れられるものの、演出は若干唐突にも感じられた。あとは交代劇の顛末なんだけど、個人的には若干物足りないものも感じて、それは何でかというと、即死だった点だ。これ、うがった見方をすると、師匠が即死だったおかげで、弟子は迷う必要が回避されて先に進めたとも見えてしまうのだ。もしこの師匠が血をゴボゴボ吐きながら「あうぅ、あうぅ」喘いでいたとしたら、弟子の彼女には、師匠の介抱を取るのか、それとも特ダネを取るのか、という葛藤が生じたはずなんです。個人的に最も見たかったのは、そんな師匠を強い眼差しで見捨てながら踏み越えていく姿だったんだけど、まあ、それはエンタメ的に難しいのだろう。であれば、泣きすがる弟子を、師匠が「……ぉ……ぃ……きなさ……ぃ……ゲフゥ」と後押しするとか!……と思ってしまう私が古典劇体質なだけで、二の句が継げぬのが戦場の現実ぅ!とおっしゃるのであれば、それはそれで正しいと思います。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)ひゅうちゃん けにろん[*]

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