[コメント] PERFECT DAYS(2023/日=独)
あるいは、仕事の合間に屋根やドアに映った人影を見る場面も反復されるが、ミタメショットが律儀に挿入される。
アパートは、亀戸あたり。スカイツリーのティルト(アップもダウンも)、多過ぎないか。墨東から渋谷区へ首都高を通って軽自動車で向かう。渋谷区内が仕事場所。昼食は代々木八幡の境内のベンチでサンドイッチを摂る。オリンパスの古いコンパクトカメラ(銀塩カメラ)で、梢(あるいは木漏れ日)を撮影する。しかもモノクロフィルムで。姪のニコ−中野有紗との場面では、パックの乳飲料を飲むツーショットが相似形の所作の演出で、思わず『浮草物語』や『父ありき』の渓流釣りの場面を想起する(いや、こういう相似形状で人物をシンクロさせたツーショットは無数に想い出せるだろう)。
また、モノクロということでは、眠った後に挿入される、夢を表現したイメージショットが抽象的な造型だが、簡潔な処理で上手くメリハリをつける。ただしこのような細部を魅力と受け取るか、散漫なキライがあると受け取るかは観客によるようにも思う。例えば、繰り返し出て来る田中泯のホームレスの簡潔な描き方、ロングショットのみで寄りのショットが無い、なんてところも同様だろう。
劇中、古いカセットテープでかけられる既成曲の中では、タイトル曲のルー・リード以上に、アニマルズ(「朝日のあたる家」)や、アヤ−アオイヤマダ(相棒のタカシ−柄本時生がご執心の女の子)が気に入るパティ・スミスや、エンディングのニーナ・シモンが印象に残る。特に「朝日のあたる家」はスナックのママ−石川さゆりによる歌唱シーン(浅川マキバージョン)もあり、これは最強だろう(上手すぎる!)
そして、私にはかなり予想外だったのだが、ハグ(抱擁)のシーンが3回あるということも書いておいて良いだろう。一番驚いたのは麻生祐未とのハグの演出だが、三浦友和にもハグのシーンがあり、彼が出てきて本作終盤の求心力を高めているのは確かだと思う。隅田川テラスでの影踏みも良いシーンだが、その前のロングピースを小道具にした場面が実に魅力的な演出だと感じられた。求心力ということでは、エンディングのニーナ・シモンが流れる中の、泣きそうな笑い顔を延々と映した画面の力は格別だ。ちょっと取ってつけた感もあるが。
#備忘で明記しておきたい脇役等を。
・境内での昼食シーンで出て来るOL−長井短が科白無しだが忘れ難い個性。
・撮影したフィルムを同時プリントに出す写真屋の主人は柴田元幸。下北沢の中古レコード屋の店員は松居大悟だ。客の中にはヴェンダースがいる。
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