寡黙な愛、と言うかなんというか、不器用と言う物ではない。しかし器用でもない。これが本当に大切な人に対してするべき最低限度の事で、言うべき最低限度の台詞なのだ。

正直、ラストのあの二つの台詞。出るタイミングも内容も完璧だと思うし、この映画自体、北野映画独特の雰囲気と過激で、何よりも空虚で終わりのない暴力描写や間の取り方、所々に出てくる白けたギャグ（←観客の白けた、じゃなく）。こういういつものテイストの最高地に達した、極めて洗練された作品、と言う物だろう。

確かに前評判通り良い映画だったし、『ソナチネ』と比較すると、確かに「暴力」を前面に押し出していない辺りで、何かがいつもと違う気もする。

個人的にはどちらも嫌いではないのだが、今一歩「好き」になる事が出来ない。

作風の問題ではない。北野映画の間から生み出される独特の空気や、空虚でそして終わり無き暴力。無口で不器用だが、ずっと人の事をきにかけ、ひたすら精神的に自虐し続ける。

自分を攻めて生きて、暴力に走る。

基本プロットは素晴らしいし、全体を通してみても脚本の方も確かに良いと思う。

全編に渡って何度も登場する北野自身が書いたと言われる絵も、最初の方は出し方が不自然だったのでどうも五月蝿くも思えたが、怪我した同僚が絵を描き始めた辺りからの絵の出し方には下手糞な部分は見えなかった。

映画としての質は高い。

だが、何かが足りない。

本当は★３

だが、最後の２発の弾丸。俺には最後の二つの台詞よりもあの弾丸が切なく見えた。

放たれた２発の弾丸は誰に向けられた物なのか。自殺する為に２発の弾丸を使用するはずがない。では妻に？

その時の表情を敢えて映さない。恐らく西（北野）は無表情で涙を流していただろう。妻は笑っていたのだろう。

それを想像すると★３では少なすぎる気がしてならなかった。