[コメント] エール!(2014/仏)
二作のシチュエーション上で大きく異なる点として、家業の変更、兄弟関係の差異などもあるが、私が一番大きいと感じたのは、主人公の立場、家族の依存度の差だ。つまり、リメイク作の依存度の方がかなり高く、本作は低い。云い変えると、本作の家族は、主人公がいなくても、それほど困らなそうに見える。その要因として、地域コミュニティとの関係も良いように(助けてくれそうに)見えるということもある。この相違は、エンディングの観客の心持ちにかなり大きな差異をもたらすように私は思う。この設定変更によるリメイク作の功罪は、人に寄って感じ方が異なるかも知れない。主人公への依存が高いから、劇的な面白さが増したという見方もできるだろう、だが、私はリメイク作の「問題の放りっぱなし感」が、かなり気になったクチだ。リメイク作が弟を兄に変更しているのは、この問題と深く関わるが、私は、まだ足りない感覚を持つ。
あとは上に比べると細かな部分と思えるが、主人公と二人の脇役との関係性、その描き方が異なる点は指摘すべきだろう。まず、校内のコンサートで主人公とデュエットをすることになる男子の描き方。これは本作リメイク元の方が希薄な存在感だろう。彼のモチベーションの描写も薄っぺらい。対して、コーラス部の顧問の先生については、私は本作の方がスムーズな描き方だと感じられた。特に、リメイク作で見られたような、主人公との関係変化に関しての違和感は、ほゞない。俳優のキャラで云うとリメイク作の方が濃いと云えるかも知れないが。
また、主人公の両親の性的な奔放度は、フランス映画の本作よりもリメイク作の方が高い、というのは興味深い改変だと思うが、それほど大きな差異ではない。そして校内コンサートからエンディングへの流れについては、ほゞ同じで、遜色はないが、やはり、主人公と父親が二人きりになってからの歌唱シーンが心震える良いシーンだと思う。父親が娘の喉に触れるという演出がいい。
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