相変わらず時系列も因果関係も無視した河瀬直美らしい演出でちっとも「記録映画」らしくない仕上がり。とは言え美点としては、私たちが今回のオリンピックにモヤモヤした元凶らしい意識の奥底に内在した、いつ地滑りを起こすか分からない活断層のような“溝”の存在が垣間見えるぶん[SIDE:A]より数段面白かった。

映画の出来不出来は別にして、みんなが薄々気づいていた商業化(1984年のロス)以降のオリンピックの胡散臭さが白日のもとに露見してたエポック大会としての「東京2020オリンピック」をとりあえず“公式な記録”として映像にまとめた、ということでまあいいんじゃないですか。だって新聞もテレビもネットメディアも、みんなオリンピック閉会後はだんまり決め込んで何も検証しないまま今月末(2022年6月)に五輪組織委員会は解散してしまうそうですから。

オリンピック憲章を高潔だと持ち上げて、IOCという名の「巨額集金システムの維持」と、開催国の「経済対策や国威発揚」をトレードしての空騒ぎはもうやめにしたほうがいいですね。国も都市も市民もアスリートも欲望の底深さとエゴの罪深さに気づいてオリンピック(IOC)の発展的解体、すなわちスポーツの解放の契機として、この2021年の“東京の笑えない空騒ぎ”を活かしたいものです。

賢明な日本国民であられる皆様におかれましては、よもや2030年に札幌でもう一度などと お考えでないことを信じております。ちなみにわたくし、福岡と東京がオリンピックの国内誘致合戦をしていた2006年頃より東京開催には反対しておりました。