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[コメント] コーダ あいのうた(2021/米=仏=カナダ)

映画がこれまで真正面から向き合ってこなかった対象に踏み込みながら、オーソドックスな家族の物語を暖かく描いている。前者の要素がなければオスカー受賞もなかったかもしれないが、愛すべき小品と言える。
緑雨

ヤングケアラー的立場とも言える主人公の存在を巡り、家族内の依存による重圧と絆の裏腹な緊張関係が、コミカルで美しくも深い会話を通して描かれる。

会話といっても、家族間で交わされる会話は言葉ではなく手話という手段を通じて行われる(主人公が感情的になると同時に言葉も出てしまう場面もあったが)。ただ(英語を聴き取ることができない)我々観客は、セリフも手話も同じように字幕を読むことになってしまうので、作品から受ける印象も幾分違ってしまう側面はあるかもしれないとは思った。字幕を読み続けて会話を解釈をすることで、コミュニケーションは形式を問うものではない、という感覚は逆に増大したようにも思うが。

舞台はマサチューセッツ州のグロスターという港町とのことだが、冒頭の海、漁船、漁港、そして森を抜けたところにある秘密の湖沼、ロケーションが魅力的。そこに主人公エミリア・ジョーンズの美しくも力強い歌声が重なる。

終盤に圧倒的な歌唱シーンが3場面あるが、シチュエーションや歌に乗る感情に違いが盛り込まれ、いずれも魅せる。”Both Sides, Now(青春の光と影)”は歌詞のメッセージと相まって特に感動的。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)けにろん[*] おーい粗茶[*]

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