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[コメント] 皮膚を売った男(2020/チュニジア=仏=ベルギー=スウェーデン=独=カタール=サウジアラビア)

背中にタトゥーを彫った「美術品」となった男性とアーティストは実話だそうで、それに着想を得たにしても、設定がリアルで、本当にありそうで、最初はドキュメンタリーかと思った。
シーチキン

何より彫られる側と、彫る側及びそれを売買する側との、格差というか、厳然と区別されている二つの世界の対比があまりに鮮やかに、現実の世界を反映しているように見えるのだ。

シリアの内戦を遠い国の悲劇としか感じない人々。そして一方で「五つ星ホテルに泊まっているから搾取されていない」という台詞。この辺りがなんともリアルで、現実に対する風刺と皮肉が強烈な印象を残す快作(私にとっては)、だと思う。

それにラストはいかにも映画らしくて気がきいている。

あと、まったくの余談だが本作の公式HPをみてモデルとなった作品「TIM」のことを読んで、手塚治虫の名作「ブラックジャック」の一つのエピソードを思い出した。

それは病に瀕した大物老ヤクザの親分の手術を依頼されたが、老ヤクザには腹から背中、肩から太ももにかけての全身に、見事な刺青が彫られていた。老ヤクザはその刺青が自慢で、刺青にメスを入れることは許さないと、頑として手術を拒んでいたが、見かねた家族がブラックジャックに依頼した。

ブラックジャックは依頼を引き受けて彼を手術するのだが、ラストでは老ヤクザの死後、彼の遺志で見事な刺青はきれいに皮をはがれて標本として展示されており、老ヤクザの息子が刺青の傷の有無を確認するのだ。

見事な刺青が、作品として死後も展示される、というのはありえる話なんだろうなあ。それもあるから、ドキュメンタリーと思えたんだろうなあ。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)プロキオン14

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