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[コメント] ドリームランド(2019/米)

基本、シネスコだが、度々挿入されるフラッシュバックは、スクウェア(正方形)に近い画面になる。主人公フィン・コール(ユージン)の妹が、兄のことを語るナレーションで進行する。
ゑぎ

スクウェアの画面挿入には、フィン・コールの想像したイメージかと思わせる繋ぎもあるが、全体を通して考えると、あくまでも、ナレーター(コールの妹)が思い描いた、コールとマーゴット・ロビー(アリソン)のイメージなのだろう。あるいは、フラッシュバックとして提示されていないが(シネスコの画面だが)、終盤の銀行強盗シーンも、出来すぎているというか、演劇的に過ぎる演出に感じられ、妹の想像の具現化じゃないのかと思いながら見た。

 特記すべき場面を、もう少しあげておきたい。序盤から、マーゴット・ロビーに関しては、かなりインパクトのあるシーンが続く。登場が、逃走中の自動車を運転する渋顔のアップカット。納屋で太腿から銃弾を取り去るシーンや、フィン・コールと二人で池に入るシーン。唐突にコールをビンタする場面などなど。しかし、何と云っても、モーテルのシャワールームの長回しの演出がいい。フィン・コールだけを画面右端に映し、右の画面外にロビーを配置した会話シーンだ。時間をかけた会話の最後に、裸のロビーがフレームインするのだ。

 また、中盤のダンスパーティのシーケンスで、ボディ・パーカッションの(手で体のあちこちを叩いて音を出す)ミュージシャンのオジサンが登場する(IMDbでは、「Hambonist」と記載されている)。この演奏場面と、保安官事務所でのフィン・コールとをクロスカッティングするのだが、この音の使い方は、『セインツ』の劇伴を意識しているのだろうと思った。ま、『セインツ』に比べれば、全体に荒っぽい出来ではあるが。

 あと、納屋のドアの向うに、バカでかい砂嵐の遠景を見せるカットにも瞠目する。この後の、砂嵐の描写に、もっと迫力があれば、さらに良かったと思う。そして、映画全体を通じて、フィン・コールの妹の存在もいいのだ。語り部の役割をきちんと担っている。実際に、この子がエンディングまで事件現場にいる、というプロット構成がいい。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)シーチキン[*]

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