[コメント] 私は確信する(2018/仏=ベルギー)
これは思いの外、面白かった。私は、ダルデンヌ作品常連で、本作では弁護士役のオリヴィエ・グルメを目当てに見たのだが、本作が優れて面白いのは、ひとえにノラ役マリナ・フォイの、サイコパスといっても良いぐらいの偏執の造型がゆえだ。
パラノイアのノラ。その短いカットを繋いだカッティングに興奮した。レストランでの労働、子供の送り迎え、音源の聞き取り、付箋の作成、録音テープの文字起こし、青い紙への印刷などなど、これらを素早いカッティングでリズムよく繋いでいく。また、フラッシュバックや回想を一切使わず、供述やテープ音源のみで過去の出来事を観客に想像させるという手法も良いと思う。クライマックスはノラが弁護士に渡したはずの録音CDが見つからず、加えて子供から火事騒ぎの電話が入って来る場面だろう。こゝの切迫感の創出は、全くお見事だ。
そして、実は、本作の主題であるかのように宣伝されている裁判の行方については、凡庸というか面白みのないもので、弁護士オリヴィエ・グルメの最終弁論も、熱演だが、冗長なものにしか感じられないのだ。我々観客にとっては、もう分かっていることを、繰り返えし聞かされているに過ぎない。オリヴィエ・グルメにおいても、彼のキャラクターが活かされているのは、ノラの暴走に振り回されている場面だろう。という訳で、ノラの暴れっぷりに面白さを見いだすことが肝要な映画であると私には感じられた。
#裁判長が被告人に、事件をヒッチコック映画にたとえると?と質問する。被告が『バルカン超特急』と答えると、裁判長はもう一つあるでしょうと云う。『間違えられた男』と。これってジョークなんでしょうけど、こんなこと云う?
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