はじまりはそれほど悪いとは思えなかった。なるほど、若い観衆にはこういう切り口が合うのだろう、と思う程度だ。せいぜい海を知らないジョゼがこんな立派な海中散歩を夢想するだろうか、と癇に障る場面がある程度だった。

だが、後半は酷すぎるというか、実写版のほろ苦さどころかサッカリンか何かのような甘さに閉口する。ジョゼが背負う障碍者ゆえの屈折が微塵もなく、単なるツンデレ娘でしかないのだ。確かに障碍者もポジティブに描かねば最近はクレームが殺到するのかも知れぬが、ジョゼが恒夫に恩返しできる性格の健やかさを誇示するシークエンスには唖然とする。そもそもが都合のいい二度目、三度目の事故は脚本家の幼稚な想像力を物語るが、それだけならまだいい。事故で重傷を負い絶望に沈んだ恒夫が、ジョゼの披露した絵本を見せることで安直に立ち直る安易さ。また恒夫を慕う快活な後輩が見せた醜い嫉妬心が、恒夫をめぐるふたりの娘の恋のさや当ての一場面に堕する毒気のなさはこの作品の低俗さを強調する。田辺はこんな話を書き殴る恥知らずではないはずだ。女なればこそ女の精神のグロテスクさが見えるものではないか。だから同時にそこにつけ込む男の身勝手さも見えるのだ。

結局、本作はクリスマスのデイトムービーに相応しい、毒にも薬にもならぬ凡作と成り果てた。絵だけは綺麗だったが、硬質なタッチは最近当たり前になったコミカルな変顔とマッチしていなかった。こういう安易な流行へのすり寄りはいただけない。