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[コメント] 浅田家!(2020/日)

前半と後半でプロットはシフトするけれど、「浅田家いつやるねん」というテーマでしっかり繋がっている。ちなみに本作劇中、「〜家」という言葉は、「〜さんち」という意味以上に、もっぱら「家族そろって写真を撮る」という意味で使われる。
ゑぎ

 ファーストショットは町の遠景固定ショット。山上か高いビルから撮った俯瞰の三重県津市。最近、ドローン俯瞰の移動で、家へ寄って行くような導入部が多く、ちょっと飽きてきたところだったが、本作の導入部のシンプルさはいい。続く父親、平田満の葬儀準備シーンで遺影の写真の選択には笑ってしまう。この後、妻夫木聡二宮和也の子供時代へフラッシュバックさせるカットは、ワンカット内で自宅の庭からベランダへ上昇移動し、ベランダに平田満を出現させる処理だ。これに呼応するように、ワンカット内で時間をジャンプさせる技法は終盤も出て来る。2011年9月から2019年への場面転換をワンカット内、小学校の昇降口(下駄箱の並んだ場所)をぐるりとステディカム(?)移動する内に行われる(カットの最後で、菅田将暉が教室から出て来る)。なかなか見せるではないか。

 二宮が堤防で釣りをするシーンが何度かあるが、父親の平田が呼びに来て「なりたかった自分」について喋る場面が、海面がとても近くに見えて、迫力があり見応えがあった。堤防は、ラスト近く、黒木華とのシーンでも重要な使われ方をする。また、海の画面で云うと、三陸海岸沿いの道路を走る自動車を空撮したカットにおける、波打ち際の見せ方もいい。

 また、子役は冒頭の妻夫木、二宮、黒木の子供時代の子等も面白かったが、震災後に登場する、父親を亡くした女の子リコとその妹がとてもいい。リコの家族写真が「浅田家」に繋がる見せ方は、どこまで納得性があるのだろうか、という問題は残るとも思うが、時計を小道具にして画面で示す演出には好感を持つ。

 全体の収束、オチとエンドクレジットバックもとても爽やか。スワンダフル。

(評価:★4)

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