[コメント] テリー・ギリアムのドン・キホーテ(2018/英=スペイン=ベルギー=仏=ポルトガル)
この2018年に、文学名作「ドン・キホーテ(1605年セルバンテス)」を描くとこう成りますという作品。名画化「ラ・マンチャの男(1972年アーサー・ヒラー/ピーター・オトゥール)」が有るが、50年弱も経ち、世の中も醜くなったので、それを踏まえたという本作だ。
役者の演技云々を越えて、操っている監督の意思、意図が如実に表れた作品だと思う。
まず、サンチョ・パンサというキャラは、いつも銭勘定をしている様な嫌な奴というか現実的という奴で、それに対してのドンキホーテが狂って理想を求めるキャラなのだ、という関係が分かっていないと、「ドンキホーテ」という書物の面白さは理解しにくいと思う。
それを踏まえて観ると、このラストシーンは名ラストと言える―アンジェリカはホントに現実的な女だから(あんな境遇でも仕事と割り切っているし、というより女は元々男より現実的だと思う・・・?ので)。 そしてアンジェリカの微笑みが心に残る、という点では愛のベストラストシーンの1本ともいえるだろう。
変態性志向と殺人狂について。私は同じ様なものだと思っていたが、‘ウォッカ王’の振る舞いを見ていて、違いがよく分かった。もっとも、それ程人の命を重視するという訳ではないらしいが。
撮影が期待していたより、良かった。そして音楽が素晴らしい。映画音楽ベストに挙げて欲しい。フラメンコの旋律をワルツに転調したと見えるが、逆で、ワルツの曲を最初に作ってフラメンコに同旋律を展開したと思える。どちらにしても、ワルツパートが素晴らしい。(→再度聞き直したが、この映画での1番はこの音楽だろう!)。
原題は「The man who killed Don-Quixote」となっている。が、これは反語だろう。すなわち「ドンキホーテは永遠に死なない」という意味ではないのか。新しい時代には、新しいドン・キホーテとサンチョ・パンサの物語が必要なのだ、と言っているのだと思う。
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