[コメント] 大虐殺(1960/日)
亀戸事件、甘粕事件からギロチン社の報復に至るまで、物語は(新東宝なのに)大筋で史実に忠実であり、だからこそ後半に進むにつれて映画は必然的にスカスカになり、アクション映画史上稀に見る盆暗かつ悲痛な収束に至る。苦悩しまくる天知茂が余りにもハマり役。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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冒頭の震災の撮影美術は悪くない(コリアンに自警団が「いろはにほへと」と云わせている)し、亀戸事件の構内及び河原で決行される殺害はド迫力で恐ろしい(被害者数など細部は演出も込みかも知れず、議論のある処なんだろうけど)。ここが一番印象に残る。甘粕事件もファナティックな沼田曜一が恐ろしく無惨。大杉栄の遺児抱いた天知の「月の砂漠」は復讐を誓っておどろおどろしい。ふたりのキーが合っていないけど。
以降の失敗続きの間抜けな報復の件の数々は、史実通りにすればするほどアクションとしての魅力を失うという二律背反を純度高く提示していて実に興味深い。空缶爆弾は交番ふっ飛ばしていたのに(この特撮は微妙に外している)ラストでは何であんなにショボいのかと思うが、これも史実通りなのだろう。ラストは今井『真昼の暗黒』を想起させる。
天知茂の古川は古田大次郎のフィクションのための改名。北沢典子との関係(これは必要だったのだろうか)とか、童貞あげた娼婦が殺した銀行員の娘だったなんてのは無論創作なんだろう。この娼婦との関係は暴力報復をやんわりと非難するのだが、天知はまるで気がつかない。この含意は優秀。この娼婦役の由紀さおりそっくりな女優さんがとってもいい。何という名前の女優さんなんだろう。
あと、空き缶で爆弾つくっているコリアンのお婆さんが印象的だが、あんなお年寄りにアナキストの協力者が本当にいたのだろうか。
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