[コメント] レディ・プレイヤー1(2018/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』と本作という相次いで2本の映画を投入し、そのどちらもヒットを取るという離れ業を行ったスピルバーグ。こんな事が出来るのは早撮りのこの人しかいないだろうけど、どっちもこれだけ質が高いというのが驚きである。
元々企画は本作の方が先だったそうだが、多量の版権ものが登場するため、作品の制作よりも版権が下りるのを待つ時間の方が長かったらしく、なんとその空き時間を使って『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』を作ってしまったというのだから驚きである。
少なくとも本作に関して言うなら、「よく企画が通った」と言うレベル。こんな夢のような作品が作れるようになるとは思ってもおらず、作品を観ている間、モブキャラ含めて知ってるキャラが出てないかと探すという楽しみが出来た。ソフトが発売されたら買って一々チェックしたいところである。
さて、それで本作評となるが、同時進行していた『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』と比べると、残念ながら、幾分…大分出来は落ちてしまう。
そりゃ大挙して知ってるキャラクターが出てくるので気持ち的には上がるし、隠しキャラ的な存在を目をこらして探すのも楽しい。特にやはりラスト近くの「俺はガンダムで行く」と、アイアンジャイアントがサムズアップしながら溶岩に溶けていくシーンなんかは極端に心拍数が上がった感じはする。
でもそれらを全てはぎ取ってみると、作品自体がとても薄っぺらいのだ。
ここで使われているゲームシステムはとても自由度の高いものという設定ではあるものの、なんか古くさい。日本のアニメ「ソード・アート・オンライン」や「アクセル・ワールド」の方が洗練されてるし、なんで「自由自由」言ってる割には過去の遺物に縛られすぎ。
そもそもゲームシステムが語られてないので、何が出来て何が出来ないのか分からないと言う問題がある。特に死の概念があやふやすぎて、ゲーム内の命が失われる可能性がどれだけ重要なのか分からない(ゲームシステム的にあってはいけない一発BANのアイテムがあったかと思ったら、それを回避するアイテムが出てくるとか、正直「ふざけんな」というレベル)。
最初のイースターエッグはこれまで4年間も見つかってなかったと言うが、あの程度の謎解きだったら数週間も必要ない。そもそもまともにレースしてゴール不可能なレースという前提があって、「逆走が出来る」という可能性が示されたら、実装された当日にクリアされるのが当たり前だろう。真っ先にその可能性チャレンジする人がいないはずがない。
そして実写パートがとにかくつまらない。現実とゲームを行き来するのは良いんだけど、オンラインとオフラインの話が切り離されているため、現実世界の側が並以下のアクション作品にしか見えない。
更に最後に「現実世界が大切だよ」というオチに持って行くのだが、これまでの過程で、何故現実が大切なのかほとんど説明されてないために話が唐突すぎて戸惑う。
周囲の人間が次々に殺されたりしてる主人公が最後に綺麗な彼女が出来て大金持ちにもなって、ハッピーな生活を送りながら、自分の価値観をゲームに強制させてるのを見てると、こいつ人として最低だなと思えてくる。
…てなことで、「どうにもはまりきれなかった」というのが正直な感想となる。
ただこれは致し方ないところもあると思われる。
本作は原作付きで、それを忠実になぞったらしいが、映像化するにあたり、情報量をかなり減らす必要があった。おそらく細かくゲームの仕様が書かれているはずの文章を全部説明できなかったのだろう。単純化されたために面白さは相当減じた。
レディメイドのアクション風になったのも、万人受けするためだから仕方ないところ。そのために個性が死んでも、それはヒットさせる条件だろう。
…と言う事を考えてみると、これだけ自由度の高い世界観の作品を作っていながら、監督自身は相当ギチギチのタイトな作品作りを強いられたのではないかと思える。
自由度がない作品を無理矢理作らされていたために、その反動で作られた『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』が監督の思った通りにのびのび作られていたために面白くなったのかもしれないな。
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