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[コメント] ラブレス(2017/露=仏=独=ベルギー)

どんな目に会わされているのか、まだ意味さえ理解できぬ小さな子供が、(中略)血をしぼるような涙を恨みもなしにおとなしく流しながら、《神さま》に守ってくださいと泣いて頼んでいるというのに(カラマーゾフの兄弟「反逆」)
週一本

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







オレなんて甘ちゃんで、世の中に腐るほどある「愛」と「奇跡」の物語に麻痺しちまっているから、やっぱり見ている間「子どもの出現」をどこかで期待しながら見ているんですよね。

子どもが何事も無かったかのように「ただいま」と現れ、両親は涙を流しながら抱擁し互いに謝罪し赦し合う。しかし当然そんなことは起きない。時は流れて日常が全てを覆い事件は風化する。タイトル通り「愛無き」世界。

待ち人は現れず、奇跡は起きない、これは正に我々の世界である。

しかし、アンドレイ・ズビャギンツェフは凄い作家だ。とんでもない監督である。

窓枠から切り取られた冬という季節、木と人間とのスケールの対比。何よりも全く焦ることなく物語を語ってゆく確固たる信念。

待ち人は現れず、奇跡は起きない。

しかし気付いた、両親から疎まれ愛されず、部屋の暗がりで声も出せず嗚咽した息子は突如姿を消した。あの子は「神隠し」にあった、そうだ劇中奇跡はすでに一度描かれていたのである。

気付いた時、この監督マジで凄いんじゃないかと思った。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)ゑぎ[*] けにろん[*]

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