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[コメント] 夜の大捜査線(1967/米)

なんでスタイガーが主演でオスカーなんでしょう?
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 ジョン=ボール原作のティッブス刑事を主役とした小説の映画化作品で、真正面から人種差別問題と取り組んだこともあってアメリカでの評価は大変高かった。

 アメリカ、特に南部には色濃く残るというアフリカ系の人種差別問題。表面的には見えてない事かも知れないが、実際には多かれ少なかれその問題はどの国にも存在する…勿論日本にも数多くあって、それを扱った秀作も多いが、それを社会派的な位物語にすることなくエンターテインメントに仕上げたのがハリウッドらしさと言えよう。その姿勢には敬服する。しかし、逆に言えばこれは切実度を回避したとも言えるし、物語を単純化しすぎという気もしてならない。同じく人種差別問題を扱った作品として、たまたま同年に製作され、しかもやはりポワチエ主演の『招かれざる客』の方がテーマとしてはしっかりしてる。

 それにこれを単純に刑事物の映画として見ると、さほどドラマ性は高くないし、あっけないほど簡単に話の幕切れが来てしまう。事件を単純にすることで差別問題を際だたせようとしたんだろうか?

 それと釈然としないのは、人種差別問題を扱っていながら米アカデミーで主演男優賞を取ったのはスタイガーの方で、ポワチエはノミネートさえしなかったこと。どう見てもスタイガーの役回りは助演じゃないのかな?そりゃ確かに名演だったのは認めるけど(ポワチエの場合、既に『野のユリ』(1963)で主演男優賞もらってるから、もう良いだろうとしたのか?)。

 最後の別れのシーンは見事。スタイガー演じるビルは、これまでの差別意識を捨て去ることは出来ず、公職にある身としてあまりバージルに肩入れすることは出来ないけど、強い友情の繋がりを感じている。だから中途半端な感情を態度だけで相手に伝えようとする。その時の表情と態度が本当に見事だった。一世一代の名演。

(評価:★3)

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