[コメント] 三度目の殺人(2017/日)
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『真実の行方』でギアは、真実は作れると言ったがそれをそのまんま題材にしたような作品で、正直目新しいものはない。しかし、映画ファンとして興奮する箇所が多く、120分間作品の暗いテンションに付き合うのは苦ではなかった。むしろ、心地良かった。是枝さんは今の邦画界で生き残れる、数少ない監督だと思う。
『CURE/キュア』で尋問側だった役所が、それと反対に、クリア板を挟んで尋問されるという構図。まるで、役所が同作で演じた高部を彷彿とさせるような怪演がホントにスゴイ。私は役所さんは、セリフのトーン調整がすごく上手い人だと思っていたが、本作で目の演技までここまで上手い人なのかと心底驚いた。また、広瀬すずも上手い。いや、厳密に言えば広瀬さんは演じるというよりかは、シーンの雰囲気を完全に理解して、それに応じて感情をコントロールし、それに表情が自然についてきているように思える。福山さんは感情よりも顔面演技に終始していたが、顔の皮が厚くなったお陰でサマになっている。演技面に関しては、他キャスト合わせても誰も浮いておらず、プロの役者が揃った、本物の映画を観たなぁというのが正直な感想。
さて、ストーリーはというと結局、真実というものは人間の都合で左右されるものですよ、そんなもので人を裁くなんてどうかしてるぜ!というだけなのであるし、最後まで観客に事実は提示されない。二転三転するというよりも、振り回されてるだけの感じだが、何故かべらぼうに面白い。展開はスローテンポだが、画の迫力と俳優陣の熱演がそれを補ってる。
映像や撮り方がツボ(法廷に差し込む光がたまらん)であるし、肝心なシーンで連発されるドアップもたまらん。劇場で観ときゃ良かった!こんな撮り方する人、是枝さんくらいでは?それくらい画作りへのこだわりを感じる。映画の内容よりも、そっちに意識がいってしまうのは作品としてどーなのと思うが、好きなもんは好き。
今まで、家族をテーマにし続けた監督がこんな作品撮っちゃうなんて、次回作にも期待大だ。家族ものじゃなくて、サスペンスでお願いします…と思ったら万引き家族撮っちゃったのね。その次でいいから、サスペンス系お願いします。
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