[コメント] 無限の住人(2017/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
タイミングよく読んだ「役者は一日にしてならず」(春日太一・著)の中で三池監督の『十三人の刺客』に関して松方弘樹が語った部分がある。松方が「十三人」で感じたことを正直に述べているのだが、それが完全に本作にも当てはまる。
詳細はぜひ本を読んでいただきたいが、概ねポイントは2つで「あの立ち回りは動ばかりで静がない」「立ち回りは一人ではできない。絡み(相手役)がいて初めてできる」という事。今の映画制作の現場で、この双方を実現するのはあまりにも厳しいのは承知しているが、本作に感じる残念な印象の原因は結局ここに行きつく。剣士としての「重さ」要は説得力がほぼ全員に欠けている。本作の設定上、どうしようもない瑕疵である。
それを脇に置くとしても天津影久(福士蒼汰)率いる逸刀流の内部設定が杜撰。「勝つことのみを目指す」のであれば1対1にこだわる必要性などないし、そもそも幕府御用達など目指す必然性がない。
また、逸刀流内部の情報体制が適当に過ぎる。凶戴斗(満島真之助)が万次(木村拓哉)に敗れ、万次の情報を天津に伝えているにもかかわらず他の剣士に情報共有がされている形跡がないし、万次と同じ「特徴」を持つ閑馬永空(市川海老蔵)が虫に効く「毒薬」を持っているのであれば、他の剣士がそれを使わない理由がなかろう。閑馬が基本的に単独行動をしているというエクスキューズはあるが、没入感はかなり薄れてしまう。
という事で、多様な理由により、ストーリーに乗れないため、「すごいことやってる割にがっかりだな」という結論にたどりつく。
三池監督、次作はジョジョですよね。修羅の道ですな。
(2017.5.8 シネプラザサントムーン)
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