[コメント] 晩菊(1954/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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「おきんも老いぼれてね、その日その日やっと生きていけますって。逆さにしたってなんにも出るものありませんて。あたしの葬式のときにせめて香典ぐらい出せるように何とか身の振り方をつけときなさいって。…………あ、どうもありがどうございました。また来月どうぞ、じゃごめんなさい」
これは序盤、杉村が見明凡太郎に対しての言付けとして沢村貞子に云う台詞で、私はこの演技を見た時点で杉村の独り勝ちを確信したのだが、それはとんだ間違いだった。望月優子! 細川ちか子!
クライマックスとなるのは上原謙が杉村の家にやって来る晩だろう。望月と細川はタッグを組んでここぞとばかりにこの映画の支配をもくろむ(照明の暗さも味方につけて)。迎え撃つ杉村は上原を軽くあしらいながらまさかのモノローグ攻撃で主導権を奪い返そうとする。なんとスリリングな対決であることか! あくる日になれば望月はモンローウォークというこれまたまさかの飛び道具を披露。対して杉村はパートナーを加東大介に代え「この映画の主役は私です」とでも云いたげな風情、背中の演技で物語を締めくくる。
というわけで、強いて云えば「成瀬の映画」というより「杉村・望月・細川の映画」という印象が強いのだが、とは云ってもそう仕向けているのはもちろん成瀬その人であるし、ちんどん屋や列車のカットを無理矢理ねじ込んでくるあたりからは「いやいや、これは僕の映画ですよ」という成瀬の大人げない主張の強さが窺える、ような気もする。ほんと面白い映画です。
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