[コメント] 女の座(1962/日)
大勢の大人たちを描き分けつつ、子供の心情というささやかなスクリーンに世の矛盾を投影する。成瀬の目配り、手さばきの上手さ。その極み。
女は三界に家なし、のアンチテーゼとしての「女の座」ということだろう。そろそろこの世に居場所のなくなる者同士、血の繋がらない者同士の方が、案外情が通じるのかもしれない。現実には、家族ってのはもう少し底力のあるもんじゃないか、という気もするけれど、そういうことが当たり前すぎて忘れられかけていた時代背景、ということなのだろう。確かにこれは、小津の『東京物語』を裏から描いているような作品だ。
笠智衆演じる爺さんが危篤となって家族を呼び寄せるところから物語が始まったはずなのに、この智衆、すっかりそんなこと忘れてしまったようなとぼけた味がある。『東京物語』の、明日お迎えが来てもおかしくないような枯れきった笠爺さんと違っていて、そこがいい。
85/100(07/06/04記)
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