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[コメント] リップヴァンウィンクルの花嫁(2016/日)

もし綾野が極めつけの悪漢だとすれば、物凄い映画ではある。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







あれほど組織だったことができるのだから当然、綾野剛は怪しい企業の一員である。「安室商会の安室です」というからには社長、いい加減な二代目といった処だろう。彼は黒木華を利用し続ける。彼女を離婚させ、Coccoの心中の相手方に選定する。それなのに、綾野への批判はついに一度も表に現れない。これが奇妙な味で、一体何だったのだろうと考え込まされる。

黒木については、作劇上のただの傀儡の感が強い。マイクを贈呈するほど学生は金持ちではないし、失業を許嫁に相談しないのは失礼だし、序盤で離婚する展開は昨今パターン化しているし(原日出子だって騙されているのだから彼女の嫌味な造形は一方的に見える)、ホテルで地道に働けばよかろうに高額のバイトに飛びつくなどどうかしているし、Coccoとの放蕩はひと昔前のロックスターものの模倣だし、結果オーライで生き延びるのがなぜなのだかさっぱり判らないし、収束に至っても何の職も得ていないのはお先真っ暗で、彼女の立ち位置は振り出し以前だ、何が感動的なのかよく判らない。

それでも長時間飽きさせないのは綾野の造形がどこに至るか興味津々だからであった。りりぃの愁嘆場、ここは肝心な処だろうが、前後の脈絡からして綾野は嘘泣きしているしか思えない。彼は愚かな老婆を小馬鹿にしているのだ。これには中々に慄然とさせられるものがあり、悪魔としか思えない。物凄いものだ。いやまさか、ここでいきなり人間らしい面が出たなどという演出は通俗の極みで、もしそうなら★2つで充分だが、そうは取らない。彼は今後も職のない黒木を利用し尽くすのだろう。なお、ここで脱がない黒木がまたいけない、肩だけはだけているのが侘しい。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)まりな[*] たろ[*] KEI[*]

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