[コメント] 流れる(1956/日)
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幸田文の小説の映画化。大物女優の共演が話題となる。事実女優で言っても、山田五十鈴、田中絹代、高峰秀子、中北千枝子、杉村春子など、当時の主役級の女優ばかりを集めて製作され、作品としても、大変豪華なもの。
ただし、ここで主題とされているのは古びた置屋。内容も重く、華やいだ作品とは決して言えない。この素材でいかにして観客を引きつけるのか。と言うのが、あるいは成瀬監督の挑戦だったのかもしれないし、だからこその、これだけの俳優陣が必要だったのだとも思える。
事実、本作での彼女たちの演技は凄い。芸妓の表舞台である華やかな部分は見せず、あくまで裏方のドロドロした人間関係をしっかりと見据えた演技が映えている。ぶつぶつと愚痴を言うのも、結局それはやりきれぬ思いを少しでも表面に出そうとしてのこと。そしてどんなに裏切られても、やっぱり同じ過ちを繰り返してしまう女性達。高峰秀子や山田五十鈴と言ったベテランだからこそ出来る演技の幅というものだ。
そして本作を特徴づけるのは、あくまでそれを部外者である梨花という女性の目で“観て”いるという点だろう。あくまで外から女性達を観る。その立場で一貫しているから、多くの女性達の思いが錯綜しつつも、物語がすっきりとまとまっているのだ。
この手の物語がどうにも苦手なはずの私でさえ目が離せなかったのだから、観るべき人が観たのなら、更に評価は高くなるんだろう。 …まだまだ私は客観的な視点というのが足りないようだな。
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