[コメント] ファーナス 訣別の朝(2013/米)
これほど腰を据えてじっくり物語を展開できる演出的胆力は決して普通ではない。ケイシー・アフレックが自滅的にウディ・ハレルソン主催の地下拳闘試合に挑むあたりで、ようやく「おやおや雲行きが怪しくなってきたゾ」と思わせるが、それまでは落ち着き払ってジャンル不定の先読み不能状態を貫いている。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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要するに、映画の前半部ではどのような花を咲かすこともできる物語の種子が植え育てられている。結局それは復讐劇として花開くことになるのだが、不出来な弟と病床の父を抱えたクリスチャン・ベイルのホームドラマに舵を取るのか、ベイルとゾーイ・サルダナの男女生活や、そこにフォレスト・ウィテカーを交えた三角関係に焦点が合わされてゆくのか、物語は多様な展開の可能性を孕んで予断を許さない。それが沈着な語り口ながら退屈とは無縁の見応えある芝居で少しずつ推し進められ、心地よい「普通のアメリカ映画」的充実感を獲得している。『THE GREY 凍える太陽』『世界にひとつのプレイブック』に続いて、奇手に頼らない正攻法の高柳雅暢撮影も応援のし甲斐がある。
ハレルソンは極端な悪役もさすがに余裕綽々でこなしているが、その造型にはもう少しけれん味があってもいい。云い換えれば、近年の作で云うところの『ウィンターズ・ボーン』や『ペーパーボーイ 真夏の引力』のような「アメリカ合衆国の僻地に住む、およそ同じ法の下に生活しているとは思えぬ人々」の生態観察劇の側面をもっと押し出してほしかったという希望がないではない。
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