[コメント] アルゴ(2012/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
無事に脱出が成功するまでは緊張の連続だ。
民衆が押しよせるギリギリのところでの大使館からの脱出シーン、
映画スタッフの現地視察として街に出て囲われるシーン、
チェックインカウンターで予約がないと言われるシーン、
繋がらない電話のシーン、
シュレッダーの写真が子供の手によって完成し顔が映し出されるシーン、
滑走路で飛行機を車で追いかける鬼気迫るシーン
機内でのキャビンアテンダントが告げる最後のアナウンスまで 緊張・緊張・緊張のシーンの連続だ。
たった一度だけ緊張が解けるシーンがある。 空港の最終チェックをクリアし、飛行機に乗り込んだ後のシーンだ。
イランの空港警備員が映画の絵コンテをみてとても楽しそうに 映画の内容を身振り手振りで話している。
まだ観た事もない映画を、今観て来たばかりのように嬉しそうに話している。 映画の本筋にはほとんど関係ないこのシーンであるが、
ずっと緊張し続けていた私は、このシーンの柔らかい雰囲気がとても印象に残っている。
監督は、このシーンを、この後の飛行機を追いかけるシークエンスを盛り上げるための 緩和剤として挿入したのかもしれない。
だけど映画好きな私はこう思うのだ。
あのシーンのイラン人は心の底から楽しんでいた。幸せを感じていた。
人の行動を変えるためにはいくら説明しても、いくら命令してもダメなのだ。
人の行動を変えるためには、人の心を動かす必要がある。
人の心は、気持ちが揺さぶられた時に動くのだ。
映画にはその力があると。
この映画は、イランの政権に関しても、非合法な行動に関しても、国際関係に関しても、全く触れていない。
だからこそ、心が揺さぶられ、感じるものがあるのだと思う。
観た事もない映画の絵コンテであれだけ気持ちが動くんだから
この映画を観た人はきっと大きく気持ちが動いているんだと思う。
アカデミー作品賞に輝いたこの映画が、 少しでも世界を変えてくれる力になる事を心から願う。
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