[コメント] シリアスマン(2009/米)
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『ノーカントリー』の時に「うまく説明できないけど、なんだか凄いとこに到達したなあ」と感想を持ったのですが、これも同じ。
少し前の時代(60年代?)の地方のアメリカで今回はユダヤ人コミュニティーを舞台として「人間は可笑しくて悲しい」という、いつものコーエン節なのだが、その精神性というか文学性というか、いやあ、何だろう?凄いなあ。
私は、コーエン版「黙示録」だと思うんです。タルコフスキーの『サクリファイス』みたい。 ただ、「黙示録」と言っても、「人間は可笑しくて悲しい」視点を貫くコーエン兄弟は、“世界”ではなく“人間”を描くんですが。
そして“善”が勝つ物語ではないのです。 不正を受け入れて、そのせいで(?)竜巻やら病気やら(笑)って風にも見えますし。 誰もが「良かった良かった」と絶賛する成人式?だか何だかだって、ラリってるし。 もうねえ、教科書的な道徳にNOを突きつけるんですよ、このインテリ兄弟は。
それでも私は「黙示録」だと思うんです。人間を中心に描いた世紀末感の映画。 『サクリファイス』は自らを犠牲にして世界を救う男の話でしたが、『シリアスマン』は自らの苦悩を誰かに解決してもらいたい利己主義(他力本願)がさらなる(どうしょもない)不幸を呼び込む話に見えるのです。 そしてそれは、正反対に見えて、実は表裏一体なのかもしれません。
「人を殺した」と思うか「悪霊を退治した」と考えるか。 そういうことなんだと思います。 それはもう「大人の思考」というか、老成した大師匠みたいな思考。 事実は一つかもしれませんが、真実は必ずしも一つじゃない。 いや、これだって、「見方を変えれば考えも変わる」と捉えるか「人は思い込みで行動する」と捉えるかって話かもしれませんし。
ま、シリアス・マン(まじめ男)ほど、事態をシリアス(深刻)に捉えちゃうんだよね、って壮大なギャグかもしれませんし。
(11.02.27 ヒューマントラストシネマ渋谷にて鑑賞)
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