[コメント] あしたのジョー(2011/日)
まず「ドヤ街」という概念自体が、すっと人の心に入ってこないんじゃないか?2011年現在47才の私でも、「ドヤ街」と言われてピンと来ないのである。かなり時代考証も頑張っていて、ドブの臭いそうな街並みが漫画の通り再現されているが(ていうか、ちばてつやって、ホント絵が上手いよね)、出てくる人みんながやっぱり「平成の顔つき」をしているし、貧しさや殺伐とした感じがあまり出てないのである。子供たちなんかもまるまると太っちゃってるのである。
数十年前の出来事が絵空事みたいに感じられる高度成長期の日本って、ほんとに高度成長期だったんだなあと変なところに感心したりする。
残念な点といえば、やはり2時間の尺の中に力石戦までを強引に詰め込んでいるところだ。序盤の少年院時代や、ウルフ金串戦だけでもそれぞれ一本映画作れるくらい内容があるので、消化不良はどうしても否めない。そのため、重要人物のマンモス西の描き方は上っ面だけになっているし、サチをはじめとする子供たちに至っては、原作を読んでいない人にはほとんど位置づけがわからないと思う。で、超重要人物の紀子はどこに行ったのだ?
香里奈が「矢吹君のことが好きでたまらないお嬢様」にはどうしても見えないのも残念なところだが、実際白木お嬢様は絶頂期の島田陽子でもかなり難しいのではないかと思われるので、他にじゃあ誰か適役がいるのかといえば、他に思い当たるわけでもない。
「おい、おっつあんよぉ」「なんだ、ジョー」というセリフを見ると、あおい輝彦と藤岡重慶の声しか思い浮かばない世代の私であるため、どうしても山下版のジョーにはもうちょっとヘラヘラした不敵さがほしいなと思うし、香川版の丹下段平も再現度はこれ以上ないと思われる(おでこの段とか、後ろ頭のシワまで再現している)が、声が少々ドス不足気味である。伊勢谷版の力石にはこれ以上の力石を実写で望むのは難しい思われ、彼が本作で一番良かったのではと思う。
いろいろと残念なところはあるが、その反面期待以上の出来上がりだと思うので、良かった。
しかしながら、やはりオリジナルのストーリーを大切に、もうすこし細かく話を分けながら、シリーズ化して作れなかったのかと残念さはぬぐえない。本来の映画作りよりも採算性が先に来てしまう「◯◯製作委員会」方式の弊害かなと思う。
あと主題歌は絶対尾藤イサオだろ。なんでわかんないかな?
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