[コメント] チャップリンのカルメン(1915/米)
物語などパロディの枠組みに過ぎず少なくともチャールズとエドナの映画としてSO-SO
時代の趨勢に敏感であったチャップリンが大言壮語の大家セシル・B・デミル製の『カルメン』を軽口にパロった本作、話の筋などは、チャップリン流に軽口に要約した装置として用意され、ここに確かな刻印として印象付けられるのは溌剌とした愛らしさを本編中存分に振りまくエドナ・パーヴィアンスへの賛歌であったのだと言い切りたい。ここでのエドナはこれまでにないくらい一際の輝きをもって、奔放な、しかしキュートで悪意のない、その意味ではあくまでもコメディ調のカルメンを体現しており、まさしくチャップリン=ドン・ホセの思慕の対象として確かな存在感である。エドナがチャップリンに寄せる視線は演技以上のものが湛えられており、この時期の二人の関係がとても良好な様子であったろうことが嫌らしいくらいに伝わってきてほのぼのと嬉しくなる。本作は40分程の尺となり、前半の件は大層退屈ではあるが、後半から盛り返し、ラストシーン、ドンデン返しのオチにもチャップリン流の冗談がさわやかに利いてなんとなく締まりが出た。またそのラストカットもチャールズとエドナのツーショットで幸せいっぱい。後年、チャップリン映画から身を引き、女優業も引退したエドナに、彼女が亡くなるまでの間ずっと「チャップリン・スタジオの専属女優」として出演料を払い続けたとされるチャップリンの逸話も、この映画の二人の姿を見るにつけ実に感動的である。
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (0 人) | 投票はまだありません |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。