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[コメント] サロゲート(2009/米)

B級SF的滋味の味わえる希少な一品。間違いなく「ああこれがやりたくて作ったんだな」場面にさしかかる終盤のアクションは「何それ!」的ワンダーに溢れている。
おーい粗茶

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







これわかんないけど原作コミックではウィリス夫婦とかの事情のような、「サロゲートを選んだ理由」と「結果」についてのさまざまなエピソードが語られるのが趣向となっているのではないだろうか? 本人は男なのに巨乳ちゃんになってイイ男と遊びたいとか、単に職能を高めるために使用するとか、誰かに勝利したいから使うとか、あえて生身でいることを選ぶブ男とか、いろんなその人その人のサロゲートにまつわる事情(理由)こそが面白いっていうシリーズなのではないのかな? もちろんこの映画で語られたグリアー刑事のエピソードこそが核なのだろうが、一話きりのエピソードで連作するTVシリーズ向きなものを、無理やり核のエピソードだけとりあげて映画にした。どうせ掘り下げていったって人間性の回復っていう主張に向かうのだから、もうわかってるって言われるだろうし、それより人造美の男女がかっぽするバカげた世界を見せるってことに絞っていこう、と。

で、そういう世界の描きこみ省略で客騙しがうまくいってないと思う。「これなら仮想現実の方に行かない?」とか、「ロボット派か人間派かっていうのは、思想以前に経済格差の問題じゃん」とか、たぶん相当数の観客が見始めてすぐにそんなことをいくつか思い浮かべてしまうくらいこの作品の世界の在り方に懐疑的にならざるを得なかったのではないかと思う。要するにこの世界にノれなかった、という人が多かったと思う。「こんな世界にはならないんじゃね?」っていう疑念はねじ伏せなければならないのに。

前提となる架空世界の存在を観客が信じられない、というのはSFとしては致命的。そのウソにのっかってくれなければ、そこでの崩壊を描いたって面白いわけがないから。もっと構成を工夫すれば、そういう登場人物たちの心性みたいなものに触れつつ話をころがして、世界観の説得ができたようにも思う。

グダグダなのは肝心のミステリ部分もそうで、事件の謎がだんだん見えてくるはずの展開部分(ストリックランドというチンピラにずっと給料が支払われていたとかいうところから、グリアーが上司とVSIとの癒着にかまかけるあたり)妙に話をはしょり過ぎでわかりにくい。グリアーは上司のパソコンから何の情報をUSBに落として、キャンター博士オペレートするところのピータースがそれの何に対して「さすがね」と言ったのか正直よくわからない(VSIの機密なのか?でも武力でまもなくサロゲートを全面停止させようとする博士がそれを知ったところで…??)。あの過負荷銃(だっけ)がロックされてしまったので、使えるようにするためのコードが必要になったとかにしてくれりゃ私でもわかったのに。

ドラマもミステリもだめなのに、高速で逃走するピータースとのカーアクションやラストの全体止まれの絵の見せ方や、最後ワラワラ外に出てくるサロゲートユーザーのほとんどがメタボだとか、そういうディテールのセンスの良さは光った。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (5 人)YO--CHAN[*] worianne[*] ホッチkiss[*] kiona 牛乳瓶

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