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[コメント] 愛のむきだし(2008/日)

80年代サブカルをなめんなよ! 真面目にパンチラを追い、必死に勃起していたんだ、あの頃は。まだ見ぬ愛を求めて。090221
しど

この作品を80年代のサブカルだとするのは、園子温が、80年代後半、ビデオ時代に入る直前の8ミリフィルム自主映画世代の一人だからだ。舞台は現代ながら、当時のサブカルエッセンスが見事にこの作品には凝縮されている。

80年代の昭和元禄もすでに20年前。あの頃の面白さは何だったのか。今となると単なる浮つき感だけだったようにも思えるが、それは、浮ついたままマスメディアに居ついた連中の放出するドラマや映画の軽さがそう思わせているだけだ。しかし、「愛のむきだし」は違う。密度が違う。そう、これが80年代の本当の面白さだ。

アダルトビデオをネットから普通に見れてしまう現在からすると、今の人たちにとって「パンチラ」がどういう意味を持つのか私にはわからないが、当時のサブカルアイテムとしての存在感は凄かった。「アクションカメラ術」や「投稿写真」などのヒット、アイドルのパンチラを狙う「カメラ小僧」まで、80年代の「パンツ」への飽くなき欲望は、それは熱かった。また、パンツを見たらとりあえず、「バキーン」と勃起するのだ。「まりもっこり」のような「ファンシー」ではなく、「バキーン」は「うんこチンチン」並の稚拙なギャグでありつつ、ストレートな愛情表現だ。

さてそんな、パンチラと「バキーン」がこの作品の多くを占めている。しかも凄く真面目にきれいなパンチラ映像。パンチラ世代としてはエロ要素に悶えつつ、真摯な姿勢に心打たれ、無邪気に「バキーン」となる。

昨今のテレビ業界系の監督には、こういうこだわりと真摯さが欠けている。「この辺出してればウケるだろ?」くらい。感動を売ろうとするには安易過ぎる。もっとも、その程度の「感動」で「ウケる」人も多いから需給バランスは取れているのがくやしい。

「だけどさ、もっと違うじゃん!」というモヤモヤ感が、この作品を見ることで払拭される。どんなにくだらないことでも、80年代は一途だった。おちゃらけ、おどけるのではなく、本気でふざけていたのだ。

とにかく、この作品の登場人物達は、皆、真面目だ。善悪無関係に一生懸命なので、魅力的でもある。一般的な上映作品とは異なる4時間のフォーマットで完成させた監督の熱意も同様だ。監督にしてみれば軽い気持ちかもしれないが、その重みは十分伝わる。

むきだしの愛のいろいろなエピソードはいちいち面白く、最後まで貫かれる愛には、醜悪な映像の4時間のゴールとしては不自然なほどに純粋で美しい。

園監督の作品は、昔から走るシーンが多い。大抵はリビドーと孤独の姿であったが、過去作品の走りに果たしてゴールはあったのかは思い出せない。しかし、死ぬほど走った先のゴールに愛があるとしたら……。

「愛」なんて言葉、いつもなら恥ずかしくて使えないけれど、この作品を見た後になら、つい、真面目に「愛」を語ってしまう。パンチラから見える愛。ふざけてるようだが、心の底から思って書いている。

どこか、カッコをつけた卑俗なだけの監督のように思っていたのだが、監督としてずっと走り続けた結果、とんでもないところにまで来ちゃったんだと、監督自身に対しても愛を感じている今日この頃。

(評価:★5)

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