[コメント] スリーパー(1973/米)
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俳優としてデビューしたアレンだが、直に頭角を現し、低予算コメディを作る監督になった。本作は初期のナンセンスコメディの代表作だが、アレンらしいシニカルさは充分によく出ている。アレンの初期作品で共通するのは、神経質なユダヤ人が革命騒ぎに巻き込まれ、いつの間にか英雄になってしまう。それで本人にその自覚が全くないのがとても笑える話になる。これは天性の感性と言えようし、その姿勢は今もなお健在。どんなものを作ってもデビュー当時から視点が変わらないというのは、一種貴重な監督と言えよう。
本作はコメディの中でもパントマイムを重要視した作品だが、パントマイム型のコメディにはチャップリン型とキートン型があると思う。どちらも卑下した動作で人を笑わせるのは同じだが、キートン型はそれを純粋に馬鹿げたものとして見せるのに対し、チャップリン型は笑っている内にだんだん自分自身を振り返ってしまうようなもの。
アレンの笑いは間違いなくチャップリン型に入るだろう。ただ特にチャップリンの作品はそれをペーソスという形に持っていくのに対し、アレンは乾いた笑いへと転換していく。最初の内大声で笑っている内に、だんだん笑えなくなっていき、徐々にその笑いも唇を歪めるような笑いになっていくのが特徴か。
はっきり言って、私にとっての本作は皆が言うほど大爆笑出来た作品ではない。社会不適合者を演じるアレンの痛々しい姿が、徐々に自分自身のみにつまされるようになってしまい、笑うに笑えないというジレンマに陥ってしまった。これを笑うのは自分自身をせせら笑ってる気分にさせられる。
現代にいても過去にいても、この人は全然変わらない。それはひょっとして私自身も…
…少なくとも、そう思わせてくれるだけでも、アレン監督は貴重な監督と言える。
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