[コメント] レボリューショナリーロード 燃え尽きるまで(2008/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
息の詰まるような映画だ。サム・メンデスは『アメリカン・ビューティー』のときには、時代設定は違えど同じ「家族」という枠組みの中で、辛らつながらももっと茶化した描写をしていたが、今回は直球でグイグイ押してくる。観ていて胸が痛くなる。レオナルド・ディカプリオとケイト・ウィンスレットの演技にも気合が入っているからより一層だ。
誰から見ても理想に見える夫婦。郊外の素敵な一戸建てに住み、子どもふたりと幸せに暮らしているように思える。しかし、そんな理想的な生活の中にも悩みが生まれてくるのが人間の性なのか。ないものねだりをしたくなる欲求を心のどこかに持っているんだろう。
ディカプリオの浮気もそう。ウィンスレットのパリ行きの希望もそう。客観的に見たらどんなに幸せな枠組みの中にいても、その枠の中では得られないものって絶対欲しくなってしまうのだ。ポジティブに捉えると好奇心旺盛で、より高みを目指す欲求でもあるのだが、逆の見方をすると破壊願望でもある。アンソニー・ミンゲラ監督の『こわれゆく世界の中で』でジュード・ロウが成功して得た生活を再構築したがるのも、その破壊的欲求なのだ。
ディカプリオ&ウィンスレットの夫婦は、物語が進むにつれて、じっくりじっくり心に異常を来たしていく。とにかく喧嘩のシーンが多く、ふたりとも感情的になりすぎな嫌いはあるのだが、演技の迫力が説得力になるのと、本気で怒ってしまうほどのつながりを持ったふたりであることを序盤の描写でしっかり見せているところがやはり構成的な巧さ。
クライマックスのウィンスレットの悲惨の最期は残酷なシーンだが、実は本当のクライマックスはその直前にあった夫婦ふたりの朝食シーンだと思うのだ。修繕を見せつつ、不安を感じさせるテーブル上の緊張感。清々しい朝の木漏れ日まで不気味に思えてくる。ウィンスレットの感情を読ませないほどの奥深い演技なんて、恐ろしいほどだ。今まで感情的な罵り合いが多かったのに、終盤のこのシーンは行間を読ませる要素が非常に多く、実に意味深で味わい深かった。間違いなく劇中一番の見どころだ。
ディカプリオ&ウィンスレットというと、やはり『タイタニック』コンビという印象が強いのだが、時が経ってこんな大人びた重厚な演技対決が見れたと思うと、なんだかとても感慨深い。もう、当時のことを忘れていた。キャシー・ベイツもあの沈没船に乗ってたんだということ、映画終わってしばらく経って思い出したのだから。
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (3 人) | [*] [*] |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。