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[コメント] 容疑者Xの献身(2008/日)

トリックよりも人間の哀しさを上手く描けているように思い、俺は感動した。(が… →) ☆4.2点。
死ぬまでシネマ

**ネタバレ注意**
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IN4MATIONさんのご指摘は全くその通りで、石神の取るべき理性的且つ論理的行動は「自首を勧める」ことに違いない。すると映画はまずトリックありきのストーリーなのかと興ざめしてしまう。しかし俺は自分を含め人間には石神のような行動を取ってしまう愚かさがあり、それがまた哀しいのだと思うのだ。「ノイローゼになった男が自己顕示の為にしでかした殺人」という風に総括してしまうと、その映画を観て涙した自分も随分と寂しいものだ。

愛するひとの為に我が身を挺する献身は、程度の問題はあるが「愛の喜び」の内の重要な一角だと思う。献身的な愛を否定したら子育てなど出来まい。しかしそこには自己実現や自己顕示がどうしても絡んでくる。と言うか、献身と自己満足は実際表裏一体だよ。自らの命を差し出した献身が最高のものと石神は考えたが、そこに大きな欺瞞があるとは…、嗚呼、哀しすぎる。

(ちゃかしたくないので括弧付きで言いますが、深い愛とストーカーが表裏一体という事も表されています。世の中の「ストーカー」達の内の少なからぬ部分が、実はイカレ野郎ではなく「伝わらなかった哀しい存在」だと俺は思っています。最後に身をひく理性が、(親友の助けもあって)逆転の求愛アタックとなる可能性も映画は示しています。)

脚本も佳いのかも知れないが、兎に角「観せ方」が上手かった映画であった(演出&編集か)。主演の福山雅治も俺は歌手としてはキライだが、求められた「ガリレオ先生」を好演していると思う。松雪泰子堤 真一は本当に見事(明らかにこの2人が真の主役。堤は自身の主演作、『クライマーズハイ』を上回っている)。割りを喰ったのが柴咲コウ。ウリである飄々とした抑えた演技が今回の位置では寧ろ仇となっている。

    ◆    ◆    ◆

観賞直後の感動が潮が退くように落ち着いて来ると、次第に幾つかの「咽喉トゲ」が目立って来る。やはり石神のトリックのアレは許されていいのか、という人間としての疑問。そして柴咲の使われ方・存在意義(この点でもIN4MATIONさんに同意)。

シネコン映画館に行ってみると観られるのはこの作品と『×××びと』だけだった。『×××びと』だけは観ないと決めているので仕方なしにこの作品を観たのだが、予想を裏切る大収穫であった事だけは間違いない。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)chokobo[*] ペパーミント[*] IN4MATION[*]

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